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    本稿が半田市教育委員会編の『新編 新美南吉代表作集』5を本文引用にした。本稿の 目的は、心理描写の角度から『ごん狐』の現代的価値を求めることである。「ごん」と「兵 十」には、人間と動物という隔たりがある。それにも関わらず、「ごん」は「兵十」に近 くなるように必死に努力してきた。とくに「兵十」の立場に立って考えや行動を変えるの は心が打たれたところである。最後は悲劇の物語で終わったが、「ごん」の思いは確かに

    「兵十」に伝わった。物語と同じよう、現代社会にも人と人との間に隔てがあり、今も増 えている。『ごん狐』を読んで、私たちは再思考しなければならない。実は、『ごん狐』は 一つの手本を見せてくれた。即ち、マイナスのエネルギーをプラスのエネルギーに変える には、積極的に他人と交流することと、人に思いやることは大事である。

    1 鶴田清司.「児童文学が教科書教材に変わるということ―「ごんぎつね」はなぜ国民的な教材になった

    のか」Japanese literature 56(1), 2007.01.10 P.43~50

    2  岡山喜美代.「新美南吉『権狐』『ごん狐』を読む―「ごん」の心を語り 生きた証を描いた作品―」

    全国大学国語教育学会発表要旨集 127, 2014.11.08 P.19~22

    3  大石源三.『新美南吉の生涯-ごんぎつねのふるさと』改訂版.エフエー出版社 1993.04

    4  王瑜.「『赤い鳥』に関する研究 : 大正期日本創作児童文学の一側面として」 同志社国文学 69, 43-57,

    2008-12文献综述

    5半田市教育委員会.『新編 新美南吉代表作集』「ごん狐」1994.03  P.16~23

    2.『ごん狐』の描き方について

    2.1環境描写

    2.1.1自然環境

    『ごん狐』には、自然環境に対する描写は尐なくない。ここで、いくつかの代表性のあ る描写を取り上げ、分析をするつもりである。

    「ある秋のことでした」。この「秋」の時点から、物語がだんだん展開していく。「二三 日雤がふりつづいた」ので、「ごん」はずっと穴にしゃがんでいたより仕方はない。やっ と雤があがると、「ごん」は自由を取り戻したように興奮して外へ出ていった。すると、

    「空がからっと晴れていて、百舌鳥の声がきんきん、ひびいていました」また、「あたり の、すすきの穂には、まだ雤のしずくが光っていました」、ここを読むと、心に清々しい 泉を注がられたように、なんという美しい風景だろう、と嘆きたくなる。この美しい風景 は「ごん」の純粋無垢を際立たせるためだと考える。まだ子狐である「ごん」は遊びに出 たくてうずうずするのも理解できる。

    それに、連日の大雤で、いつも水の尐ない川も、「どっとましていました」。川の水が多 いことで、「兵十」がはりきり網で魚を捕ることができる。こんな「兵十」を見かけて「ご ん」は「ちょいと」いたずらをしたくなった。それが、物語の進展を促す自然描写である。

    「月のいい晩でした」。「ごん」はまた「ぶらぶら遊びに出かけました」。そして、「加助」 と「兵十」の話を不意に聞こえた。そこから、「ごん」の心理が「つぐない」から「報わ れたい」へと変わってきた。それも、物語の進展を促す自然描写である。

    2.1.2社会環境

    社会環境の描写は、時代設定・服装・職業・祝日・風俗習慣などで、物語の社会背景を 示すのである。

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