中日両国の国民は両者ともに人間関係を重視し、贈答行為を通して感情を伝え、人間関係を調和し、お互いの連帯を強めている。しかし、同じ贈答行為と言っても、贈答の目的や仕方など、多くの面で相違が見られる。
1.1中日の贈答文化についての研究
中国の贈答文化に関する研究については、特に伝統的な贈答文化の研究が多い。『中国人の送礼術』の中で趙英(2010)は、祝日の贈答、季節の伝統的贈答、及び日常の贈答を分けて述べ、そして誕生日、結婚式、葬式などさまざまな場合において、中国の贈答文化に関する贈答技術や贈答タブーについて詳しく述べた。
羅林(2006)は「中国式処世潜規則」の中で、「潜規則」をめぐり、中国の国情や国民の根性の視点から中国特有の贈答行動を分析し、中国人の贈答文化の中で見られる功利的な考えを探究した。
一方、日本の贈答文化について、柳田國男(1970)は『民間伝承論』で、最初に贈答を習俗として研究し、その意義を明らかにした。柳田國男は贈答文化について、人間と神様が共食すべきだという理念を提示した。そのほとんどが記述的な研究であるが、贈答についての研究を日本民俗学の一分野として定め、後の民俗学者にとって理論的な指針となった。
柳田國男の学説を受け継いだ、別府春海(1984)は贈答の文化的概念を整理し、文化人類学の視角から、日本における贈答研究の代表的な学者の一人となった。別府春海は、神への貢ぎ物が人間と神様が共食するという表現であり、そして、贈り物を受け入れればお返しをしなければならない、という風習も共食思想の受け継がれた結果だと述べている。
中国においても、日本人の贈答文化を研究する学者がいる。楊新英(2010)は「日本の送礼文化をめぐって」の中で、日本贈答文化の風俗、社会機能、特徴とタブーについて詳しく述べている。また、孫欣欣(2007)は「贈答慣行から見た日本人の心」の中で、日本人の贈答行為から日本文化を分析した。贈答は重要な社会交際の手段であり、贈答行為を通じて、協力、競争或いは敵対する社会関係を形成するという結論を出した。
1.2中日の贈答文化についての比較研究
中日両国の伝統的な贈答文化においては、比較研究が多くなされてきた。それは、伝統的な贈答風俗、祝日・結婚・葬式・誕生日などの場合の贈答文化の比較研究に集中している。祝日に関して、中国人にとって最も重要なのは春節と中秋節である一方、日本人にとって最も重要なのは中元と歳暮である。
許向蒲(2011)は、中日の贈答行為の原因と目的、プレゼントの特徴、贈答の方式と贈答のタブーから、中日の贈答文化の相違について分析した。また劉中燕(2015)は、中国人と日本人の内外意識に基づき、中日贈答文化の相違を分析した。
そこで、本論文は中日贈答文化の相違に基づき、日本人と中国人の交際心理を分析する。これを通じて、両国民の交際心理の違いを理解し、かつ日本人と中国人の間の交流を促すことを目指すものである。