本研究では、「ソ」系指示詞を研究対象とし、その文脈指示用法における機能を日中対訳コーパスを利用して分析する。また、日本語と中国語を対照しながら、「ソ」系指示詞に関する日中指示詞の特徴、使い分け方などを探求する。この研究によって、「ソ」系指示詞の誤用をできるだけ避け、日本語指示詞教育に少しでも役に立てたいと思う。
2.先行研究
昔から、指示詞については多く検討されている。指示詞研究の歴史を追求すると、金水・田窪(1992)は「佐久間鼎の研究から語り始めるのがほぼ常識となっている」と報告している。また、鰻丼(2011)は「指示語の研究は、佐久間(1936)を始めとして、従来コソアの使い分けと体系化に重点が置かれて研究されている」と述べている。
指示詞は簡単そうであるが、実は微妙な区別がある。指示詞の使用方法は多様で、使用機能が豊富で、会話や文学作品など多くの分野に用いられている。指示詞の用法から見ると、指示詞は大体現場指示と文脈指示の二つの用法に分類されている。それぞれの定義に関しては、吉本(1992)は「現場指示とは指示物の同定が外界または出来事記憶にもとづいて行われる場合である。文脈指示とは指示物の同定が談話記憶にもとづいて行われる場合である。文脈指示は普通の定義では文脈中に先行詞(すなわち、指示詞と同一の指示物を指示する言語形式)が存在する場合とされる」と定義している。
近年、多くの研究が進むにつれて、コソアの現場指示及び文脈指示の両用法についてその使い分けの条件、文脈指示と現場指示の深い関係が次第に明確になっている。しかし、「ソ」系指示詞に関しては、吉本(1992)は「コとアの文脈指示用法は少なくとも現場指示用法としての性格を非常に強く持っている。ソについてはそこまで断定できないが、無標的あるいは中心的な指示として文脈指示・現場指示両用法の間に関連がある」ことを指摘した。また、呉(2011)は「ソ系指示詞の現場指示用法と文脈指示用法の関係を総体に分析し、現場指示におけるソ系指示詞は話し手と聞き手の立場によって、『対立型』と『融合型』に分ける。現場指示用法は指示詞カテゴリーのプロトタイプとして類似性の拡張によって、文脈指示用法を産出した。現場対立型の場合、ソ系指示詞は相手領域を指示する。その用法は類似性の拡張によって、文脈指示のソ系指示詞は話し相手が持ち出した内容を指示し、現場融合型の場合、ソ系指示詞は中距離を指示し、その用法も類似性の拡張によって、文脈指示の場合、ソ系指示詞は指示対象を自分に関わり弱いものとして平静に指示する」と述べている。以上のように、ソ系指示詞については様々な議論がされてきたが、その多くは、「聞き手」が関与するかどうかに応じて「聞き手のソ」と「中称のソ」の二つに分けて説明されている。本研究では、「中称のソ」であれ、「聞き手のソ」であれ、同じ言語形式であるため、そのプロトタイプは同じであると仮定し、文脈指示用法におけるソ系指示詞の一般化を提案する。
文脉指示用法「ソ」系指示词的日中对照(2):http://www.751com.cn/riyu/lunwen_49857.html