1.1複合動詞の定義
複合動詞は複合語に属する語である。複合語は語構成において二つ以上の語源によって形成され、新しい文法機能と意を持つ大きな単位である。その形態素が二つとも動詞であるか、あるいは後部形態素が動詞であって、形成された複合語自体が一つの動詞として働くものを複合動詞と呼ぶ。①「押し続ける」「作り上げる」のような二つの動詞を結合したものを複合動詞という。前の動詞(連用形)を前項動詞、後続の動詞を後項動詞という。類義複合動詞は語形は異なっても、意の似かよった複合動詞である。
複合動詞は広義的なものと狭義的なものがある。広義的には「動詞を後部要素として、これに動詞、また他の品詞が複合してできた動詞」を指しており、「動詞+動詞」「名詞+動詞」「形容詞+動詞」「副詞+動詞」などいろいろなパターンが含まれている。一方、狭義的には「動詞+動詞」のパターンだけを指すのである。②
意的には、「切り倒す」「ふりかける」のように二つの動詞の意をほぼ対等に結合した複合動詞もあるが、上例のように前項動詞が基本的な意を担い、後項動詞が主として文法機能を果たす複合動詞も多い。
1.2先行研究
複合動詞は日本語母語話者の日常生活で頻繁に使われているものであり、中国語を母語とする日本語学習者にとって、複合動詞の意を正しく身に付けるのは難しい。「~シオワル」と「~シオエル」との使用上における相違点を明らかにするために、筆者が資料を調べてみたところ、日中両国の言語学者は完了の意を表す複合動詞についてすでにある程度の検討を行っているということがわかる。まずは、寺村(1984)は『日本語のシンタクスと意Ⅱ』で「終了」の項目として「~オワル、~オエル、~ヤム」を取り上げている。寺村によると、「~シオワル」と「~シオエル」はその動詞が本来持っている意で使われるものであり、それ以外の後項は派生した意で使われるものであることがわかる。また、金田一(1976)は『日本語動詞のアスペクト』で、「アスペクトの複合動詞」という項目を立て、「~おわる、~おえる、~きる」が「~てしまう」と同様に動作、作用の完了を表す終結態であると指摘した。他に、姫野(1999)では「~終わる」について、単なる終了を意することと結果は不成功だったということもあり得ることを述べている。田中魁・泉原省二・金相順(1998)では「~終わる」の意用法として四つの点を指摘しており、「~終わる」は自然的な事柄・現象には使うことができないという点について、疑問を持っている。そして、中国側に至っては、趙福泉(1989)では、「~シオワル」と「~シオエル」の意も使い方も同じく、ほとんどの場合両者とも用いられるが、「~シオエル」はさらに人の意志に関する場合に使われると分析している。叶娉(2003)では、単純動詞の「終わる」「終える」を動詞の自他性から、意志について関係があるかどうか分析した上、前項動詞と組み合わせた複合動詞は単純動詞の特性によって、使われる場合が違うと論じた。そのほか、廖紋淑(2009)は『複合動詞「~おわる」、「~きる」、「~つくす」の使い分けに関する覚書―日本語話者と日本語学習者の比較―』で、「~おわる」、「~きる」、「~つくす」は外的運動動詞、内的情態動詞、静態動詞という三種類の動詞に共起しやすいかどうか、また、母語話者と日本語学習者の「~おわる」、「~きる」、「~つくす」の使い分けの違いについて分析した。 「~シオワル」和「~シオエル」 使用对比考察(2):http://www.751com.cn/riyu/lunwen_49819.html