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    「瓜畑」(古桐軒主人名義)を発表した翌年から花袋と号した。当初は硯友社 の影響を受けていたが、1896年に国木田独歩、島崎藤村と知り合った。翌年、独歩、国男らと「抒情詩」を刊行し、そこには40編の詩を収めた。モーパッサンの影響を強く受け、1902年に「アカツキ叢書」の第5編として書き下ろした「重右衛門の最後」を発表し、これで作家としての力量を認められた。日露戦争後、島崎藤村の「破戒」(1906年)が非常な喝采を博し、国木田独歩の「独歩集」が好評され、「私(花袋)は一人取残されたような気がした。何も書けない。私は半ば失望し、半ば焦燥した」という状況にあった(「東京の三十年 」)。
     花袋は「破戒」を強く意識しつつ、ハウプトマン の「寂しき人々」も参照し、自身に師事していた女弟子とのかかわりをもとに「蒲団」を書きはじめた。自分の恋愛経歴をモデルにした小説としては、これより先に森鴎外の「舞姫」もあったが、下層のドイツ人女性を妊娠させて捨てるという内容は、女弟子に片想いをし、性欲の悶えを描くという花袋の手法ほど、衝撃がそんなに強くなかった。以後3年ほど、花袋は文壇に君臨したが、一般読者にはあまり受けなかった。
    花袋の盟友ともいうべく島崎藤村は、その後、姪との情事を描いた「新生」を書いて花袋に衝撃を与えた。花袋や藤村はその後、むしろ平凡な日々を淡々と描く方向に向かった。
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