1.20世紀80年代からの女性の就職状況と社会背景
1.1 女性の就職状況
まず、男女の働く比率からみると、先進12ケ国のなかで、日本は2番目に差の大きな国になっている。それは、男女の一日のすごし方の差に現われる。先進12ケ国の比較で、日本人男性の家事労働時間は、週7日平均の1日27分と最短である。日本人女性の家事労働時間も1日に3時間程度で決して長くないが、それでも日本の男女差は12ケ国中最大である。
第二に見ておきたいのは、全労働力の40%を超える女性が、男性とのあいだに大きな賃金格差があるという点である。男性一般労働者の賃金を100としたとき、女性一般労働者は65.7で、パートを含む男性労働者を100としたとき、パートを含む女性は51.3で約半分になっている。男性一般労働者を100として時給で比較すると、女性一般労働者は68.8、男性パートは50.6、女性パートは45.2と下がる。正規と非正規の格差にくわえて、そこに男女の格差が絡みついているわけである。
大学以上の学位を持つ男性の92%が就業しているのに対し、同等の教育を修了した女性の就業率は69%にとどまっており、OECD平均の80%を大きく下回っている。また、日本は高学歴の男性の就業は世界でもトップクラスであるのに対し、同等の女性の就業は最低レベルである。
男女間の賃金格差は、長期的に緩やかな縮小傾向が続いているが、それでも雇用労働者の賃金格差は男性の100に対し、女性は66.5となっている。女性の学歴別労働力率は学歴とともに高くなり、高学歴の女性なら働く人が多くなるというのが国際的な傾向である。しかし、日本では、高卒以上で仕事につく女性の比率は各国より低水準にあり、特に大学・大学院卒では海外との格差がさらに大きい。
日本の一般企業の正社員に占める女性の割合は約3割であるが、管理職に占める女性の割合は最も多い係長相当職で7.7%と女性の採用は明らかに遅れている。管理職に占める女性の割合は係長相当職7.7%、課長相当職2.6%、部長相当職1.6%と低水準である。 業務内容をみても習熟度が高い仕事ほど男性のみに与えられる傾向がある。例外は外資系企業等で、女性の登用が進んでいる。外資系では仕事の配分も積極的で、判断力を要する仕事や専門的知識の技術を要する仕事が女性に与えられている。
日本企業に勤める女性正社員の意識をみると、配置・昇進や評価・処遇について不満を持つ者の割合は、男性と比べて高い。総合職の女性でも4割以上が仕事について不満感を抱き、同期の総合職の男性と比べて人事管理面で差があると感じている者が約6割を占めている。長く続けて仕事をしていくために女性が挙げているのは、「女性を一人前に取り扱ってくれる企業風土」、「職場の上司の女性を活用する姿勢」、「やりがいのある仕事であること」等である。
女性が均等に取り扱われている職場であるほど、女性のキャリア意識が高い。企業が男女均等の職場の実現に努力すればするほど経営業績が良い、という関係もみられる。21世紀職業財団による「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」(2003年)では、5年前と比較した売上高の増加率が高いという相関関係がみられた。
日本では女性のほうが、正社員の割合は低くなっており、パートタイム労働者、派遣労働者、在宅就業者も増加しつつある。雇われている男性は81.7%が正社員であるが、女性はその半分ほどの45.2%にとどまっている。女性の働き方はパートタイム労働が中心であり、家事従業者も多い。