過労死はわれわれ人間自身の命にかかわる社会問題であるこそ、社会各界の注目を引いている。本論文は過労死の実情を踏まえて、過労死を起こす社会背景と現状、さまざまな原因およびその症状を考察する。予防対策の分析を通して、過労死の解決に甲斐があるものを提供すると望む。それが本論文の最大の意である。
過労死問題についての研究は日本において、寳珠山務の『いわゆる過労死問題の現状と今後の課題について』、福島斉の『過労死と身体環境』などの著作がある。寳珠山務は過労死の定義、ますます深刻になる現状を分析して、また予防対策を述べるのである。福島斉は問題が起こった社会背景および女性にも忍び寄る過労死の現状を述べるのである。中国にも、鲍刚の『過労死と日本の企業経営』など著作がある。鲍刚は過労死の現状と特徴、また日本政府の態度から価値がある参考資料を提供した。しかし、過労死の影響についての研究はまさに少ない。筆者は過労死の先行研究を踏まえて、過労死の影響を考察するのである。
本論文は主に文献研究の方法を利用して研究する。文献研究を通じて中日両国の先行研究を把握して、さまざまな公の統計資料を参考して、筆者の見方を論じるのである。
2 過労死の定義
過労死の概念は、70年代から80年代にかけて、国際的に知られてきた。1982年、上畑鉄之丞医師は『過労死:脳・心臓系疾病の業務上認定と予防』で初めて過労死を定義した。過労死とは「過重な労働負担が誘因となり、高血圧や動脈硬化などもともとあった基礎疾患を悪化させ、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞などの脳血管疾患や心筋梗塞などの虚血性心疾患、急性心不全を急性発症させ、永久的労働不能や死にいたらせた状態」である。つまり「過労死とは、過労を原因として、生態諸機能が破綻して死亡する場合や、重度の心身障害を残し、再び仕事ができない状態に陥った場合も含まれる」という現象である。過労死の同じ特徴は、働きすぎて、疲れはたれるに至って、体にもともとあった基礎疾患を悪化させ、死にいたらせた状態になることである。はっきり言えば、過労死は疾病の過程あるいは体の異常状態である。主な症状は、体がだるくて、よく眠れなくて、記憶力が衰退して、食欲がよくないことである。主に過労死のありふれた死因は冠状動脈心臓病、脳出血、心筋梗塞、糖尿病合併症などである。