本文は『恍惚の人』という本の分析を通して日本の老人介護問題の現状及び問題について自分なりに分析し、検討してみたい。また、日本における老人福祉政策を紹介して、さらにわが中国の目前の老人問題の現状と存在問題について簡単に説明してみようと思う。
第一章 『恍惚の人』という本の紹介
『恍惚の人』は、日本の作家有吉佐和子 が書いた長編小説であり、1972年の年間売り上げ1位の194万部のベストセラーとなり、痴呆・高齢者の介護問題にスポットが当てられることになった。本書は認知症(認知症および老年学)をいち早く扱った文学作品である。高齢者介護に奮闘する家族の姿は現代にも十分通じるものがあり、介護医療の難しさは不変であることを思い知らされる作品といえる。
1.1『恍惚の人』のあらすじ
小説「恍惚の人」は84歳の舅・茂造がもうろくしてしまい、それを献身的に介護する息子の嫁・昭子の苦労話である。会社員である昭子の夫・立花信利は東京の郊外に住み、離れに信利の父・茂造夫婦が住んでいた。それまで一家の大黒柱だった舅・茂造が定年になり、定年後に勤めた保険集金をやめたころから舅の様子がおかしくなってきた。茂造の痴呆が明らかになったのは老妻の死がきっかけであった。茂造は老妻の死を理解できず、数日後にはボケが進行して徘徊するようになる。茂造は突然家をでてしまい、家族が探し回るようになった。
舅のボケは立花家にとって降って沸いたような問題であった。平均的サラリーマンの平穏な家庭を突然おそった恍惚という悲劇だった。茂造は何もかもを忘れ幼児化していった。嫁いびりをするほど元気だった茂造は、自分の息子や娘の顔を忘れ、息子の立花信利を暴漢呼ばわりした。それでいながらいじめ抜いていた昭子と孫のことは覚えていた。昭子はそれまで勤めていた法律事務所を休み、茂造の介護を一身に引き受けた。しかし何も手伝わない夫や親類があれこれと口を出し、昭子の悩みは深まっていった。福祉事務所に相談しても何の役にも立たなかった。虚栄だけの夫、口先だけの親戚、預ける福祉施設もない馬鹿げた社会、精神病院に入れるしかないという福祉事務所、その結果、昭子ひとりで茂造の面倒を見なければならなかった。いつ終わるとも分からない介護の日々が待っていた。何が起きるか分からない介護、それは家庭崩壊を予感させるような戦場であった。
一番感心されたのは昭子だ。茂造は痴呆になってから、ずっと昭子が介護していたのだ。家出、乱暴、人格欠損的なこともあった。昭子はずっと辛抱して、世話をしてきた。「今までは、茂造の存在が迷惑で迷惑でたまらなかったけれど、よし今日からは茂造を生かせるだけ生かしてやろう」と固い決意を固めてやってきたのだ。
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