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    (A)可能動詞

    (B)動詞未然形+助動詞(レル)・ラレル

    (C)デキル

     ・名詞+デキル

     ・名詞+ガ+デキル

     ・動詞連体形+コトガデキル

    (D)動詞連用形+ウル・エル

    以上の表現形式は現代日本語の可能表現の標識と見なされている。ただし、渋谷(1993)は可能表現の標識を用いず可能の意を含む自動詞には言及していない。しかし、一部の自動詞は可能表現の標識を用いていないにもかかわらず、可能の意を表しているとの論点が、様々な研究を重ねて明らかになっている。青木(1997)は、「決まる」「載る」「開く」などのような「コトガデキル」と「(ラ)レル」の表現形式と共起しない自動詞は「可能」が含意されていると述べている。

    張(2002)によれば、一部の自動詞は可能の標識を用いていないが、可能の意を表していることは明らかであるので、こうした表現は無標識の可能表現と呼ばれる。つまり、自動詞の終止形も無標識可能の意を表すことがある。張(2002)は無標識で可能の意を表す自動詞表現を「結果可能表現」とした。また、張麟声(2001)は、結果可能以外に中国人学習者が余計に可能形式を使うケースとして属性可能と条件可能をあげた。しかし、この自動詞の可能表現の用法が多くの日本語学習者に重視されていないのは事実である。

    例えば、「手が上がらない」と「手が上げられない」は構文的には誤りではない。しかし、もし「手が痛くて上がらない」と「手が痛くて上げられない」の場合となれば、他動詞の可能形を使う用法は不適切である。このような場合に、自動詞を使うのか、あるいは対応する他動詞の可能形を使うのか。また、その二つの用法はどんな違いがあるのか。こういう問題は常に日本語学習者を困らせているのではないか。

    そこで、本稿では、有対自他動詞を中心に、有対自動詞の無標識可能表現と有対他動詞の有標識可能表現とを比較し、有対自他動詞の可能表現の使い分けを検討してみる。さらに有対自他動詞の可能表現の使用実態の調査を通して、中国語を母語とする日本語学習者の習得状況を究明したい。

    1.2先行研究と本研究の立場

    自動詞と他動詞が対応するとみなされる基準をめぐる研究は多くの学者によって様々な立場から行われてきた。早津(1987)は自動詞と他動詞との間に形態的・意的・統語的な対応が成り立つ場合にのみ、両者の間に自他対応が成り立つとみなすことにすると述べている。更に、有対自動詞の主語の特徴とその現れの検討に基づき、有対自動詞を「働きかけによってひきおこしうる非情物の変化を、有情物の存在とは無関係に、その非情物を主語にして叙述する動詞である」と定義している。

    張(2002)は、無標識の可能表現の特徴は二つあると指摘している。一つは、無標識の可能表現では対応する他動詞のある自動詞を述語動詞とすることが多いことである。もう一つは、無標識の可能表現が「述定」表現である場合は、通常述語動詞のル形またはその否定形の形式を用いることである。また、「無標識の可能表現は有標識の可能表現との間に本質的な共通点を持ちながらそれなりの特異性をもっている」と主張している。すなわち、動作主の意図の実現を取り上げることは可能表現の本質的な共通点である。その特異性について、以下のように述べている。

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