従って、本論文では日本の温泉文化を対象にし、日中両国の学者の研究を参考としながら、温泉文化発展の原因と「国民性」との関わりを追究し、日本人への影響を研究する。そして、日本の温泉文化をより深く理解することを目指すものとする。
1.1日本と温泉
温泉という言葉を聞いて、その意を知らない日本人は皆無であろう。それほどまでに温泉は、日本国民の生活に密接に関連している。古くは江戸時代に、漢方医による湯治が奨励されるようになったことで、それにつれて各地の温泉地に繁栄がもたらされるようになった。また、明治以降の資本主義経済の発展とともに、温泉地もその場所毎に、徐々にその姿を多様化させていった。
上野陽子はインターネット上で日本の露天温泉を紹介している。上野によると、リゾートとしての温泉を楽しむとき、自然の景色を楽しめる露天風呂が人気なようである。まるで川と同化したかのようなものから、庭園を楽しむもの、ときにはサルの一家など野生の動物が一緒に入浴する姿も見られる。泡風呂や打たせ湯などマサッージ効果のあるもの、岩盤浴や、砂風呂などもまた、人気のスタイルであると記述している。(注1)
このように、温泉の利用形態はさまざまであるが、時間が経つにつれ、温泉文化は盛んになってきている。
「温泉大国」として、およそ温泉は日本の代名詞とも言えよう。
1.2 先行研究
日本の温泉文化はなぜ、どのように発展し流行したのであろうか。これについて、日中両国の学者はあらゆる研究を行っている。
徳久球雄(2004)は、日本の温泉の特徴と利用を紹介した。温泉を利用する形式には、だいたい治療、休養、養生、レクリエーション活動などがある。しかし、主要な目的は休養、養生である。一方、人々がたくさん集まり、コミュニケーションの場または気を緩めさせる場になるとも述べている。(注2)
掌月(2012)は「浅析日本的温泉沐浴文化」の中で、主に季節風気候と火山から日本の自然環境と温泉との関わりについて研究している。掌月は、日本は火山が多いために火山性の温泉が多く、また日本の気候と複雑な地形及び周りの海流などの自然要素のため、温泉の利点がはっきりと現れ、そして、温泉文化は発展していると述べている。(注3)。
張薈玉(2014)は、日本の温泉の歴史と文化の背景を検討した。初めて温泉が文献に登場したのは『古事記』であり、平安時代(794年―1192年)から湯治ということが民間で流行した。ここから、古い時代から温泉が利用されたということがわかった。また、平安時代になって温泉と宗教との関係も次第に深くなった。江戸時代以降、温泉はさらに普及し、一般人も温泉を使うようになったと述べている。(注4)
また、合田純人(2008)は「温泉文化の源流を巡って」の中で、温泉文化の源流について調べた。合田は「わが国の温泉文化は記録された多くの文献(古事記、日本書記、各地の風土記、万葉集など)から当時の風習など窺い知ることができる」と指摘している。(注5)悠久の歴史を背景に、温泉文化は発展してきたのである。
以上のような研究は、温泉文化を発展させる客観的な原因について探究したものである。
しかし、主観的な原因についての研究は少ない。合田純人(2008)は「一方、わが国は火山国`751*文+论]文|网\www.751com.cnとして多くの温泉が湧出している。山河に囲まれ緑豊かな日本の地形・気候は又、日本人の自然信仰(ア二ミズム)(注6)と一体となり独特の温泉文化を発展させた」と述べている。(注5)合田は、温泉文化を発展させる原因の中で日本人の自然信仰を示唆したが、ほかの主観的な原因については言及していなかった。