「きっと」と「必ず」に関しては、森田(1977)が「必ず・确かに・确か・きっと・ぜひ」、小林幸江(1980)が「必ず・きっと・ぜひ」、工藤(1982)が「必ず・きっと・ぜひ」、佐治(1986)が「必ず・きっと」、石上(1987)が「きっと」、森本(1990)が「ぜひ」等それぞれの論文で取り上げている。これらの研究成果は、副詞で使用頻度の高い基礎的な語彙である「きっと」と「必ず」の使用方法を明らかにした。それに、正しく日本語を話すためには、「きっと」と「必ず」の使い方をはっきりと区別する必要があることも示した。本論文では、どんな場合に「きっと」を使うのか、またどんな場合に「必ず」を使うのかについてさらに検討を加えたい。
1.1 辞典による「きっと」と「必ず」の解釈
副詞「きっと」と「必ず」は意が近いため、従来、類義語として捉えられ、使用方法も似ている。『大辞林』、『大辞泉』、『新明解国語辞典』、『日本語大辞典』の4辞書を調べたところ、「きっと」と「必ず」に関する記述は以下の通りである。
きっと【▽屹度・急度】
①確実にそうなるだろうと予測しているさま。「明日は—晴れる」「君なら—合格するよ」
②自身の事柄に関しては決意を、相手に対しては強い要望を表す。必ず。「一○日には—お返し致します」
③あることが確実に行われるさま。必ず。 ④厳しいさま。状態にゆるみがないさま。「鉢巻を—結ぶ」
⑤腹を立てているさま。「—とにらむ」
⑥動作・状態が瞬間的であるさま。
かならず【必ず】(副)
①一つの例外もなく、ある物事が起こるさま。ある条件のもとで例外なく起こるさまにも用いる。例外なく。常に。「生あるものは—死ぬ」「会えば—けんかになる」
②まちがいなく。きっと。「—来てください」「—成功してみせる」「宿題を—やりなさいよ」
③(下に禁止や打ち消しの語を伴って)決して。必ずしも。
(『大辞林』 三省堂1995年)
きっと【▽屹度・急度】(副)
①話し手の決意や確信、また強い要望などを表す。確かに。必ず。「明日は—雨だろう」「—きってくださいね」
②表情や態度などが厳しいさま。「—にらむ」「—申しつける」
③行動・状態にゆるみのないさま。
④動作が瞬間に行われるさま。急に。とっさに。
かならず【必ず】(副)
①例外のないさま。きっまて。いつでも。「毎朝—散歩する」「会えば—争論になる」
②確実な推量、または強い意志の要請を表す。まちがいなく。絶対に。きっと。「いつかそういう日が—来る」
③(あとに打消しや禁止の語を伴って)決して。必ずしも。
(『大辞泉』小学館1995)
きっと(副)
①物事が△見込(期待)通りに行われると確信をいだく様子。 ②[-する]強い対抗心や警戒心抱いていて、全く隙(スキ)を見せない態度で相手に構える様子。 かならず【必ず】(副)
ある状態について、それ以外の事が起こる可能性が全く無いことを表わす。